気づかぬうちに生活習慣病に!?
生活習慣病は、その名が示す通り、長年の生活習慣(の乱れ)を主な原因として起こる病気です。かつては“成人病”と呼ばれていましたが、必ずしも年齢を重ねることだけが原因ではないため、現在のように改められました。
忙しくて外食が続いた・運動不足になった・睡眠不足になった、という経験は誰にでもあるものです。これは私たちが社会生活を送る上で、ある意味避けられないこととも言えるでしょう。
しかし、そういう時期を一週間で終えて元の健康な生活に戻るのと、「楽だから」「仕方ないから」「忙しいから」と何年も続けてしまうのでは、身体への負担は天と地ほどの差があります。
改善できる部分を改善しないでいると、それだけ生活習慣病のリスクは高くなり、若くして発症してしまうことになります。
生活習慣病のほとんどは、特別な症状なく進行します。乱れた生活習慣を自認しながら見て見ぬふりをしてしまったり、慣れてしまったために気づかないでいると、いつの間にか生活習慣病になっていた、ということになりかねません。
少しでもご不安がある方、医師から客観的なアドバイスを受けたい方は、定期的に健診を受け、現在の身体の状態を知り、今後の生活習慣の見直しを図りましょう。
主な生活習慣病
高血圧
血管にかかる圧力が一定以上の強い値を示す状態を、高血圧と呼びます。進行すると、血管が硬くなり(動脈硬化)、血栓が生じやすくなります。脳で血管が詰まると「脳梗塞」に、心臓で血管が詰まると「狭心症」や「心筋梗塞」を起こします。いずれも、命にかかわる重大な疾患です。
糖尿病
食後、体内では糖質がブドウ糖に分解され、血中を巡ります。同時にブドウ糖を吸収するために膵臓からインスリンが分泌されますが、何らかの原因によってインスリンの量が少なかったり働きが不十分である場合があります。この状態が、糖尿病です。
糖尿病にはいくつか種類がありますが、もっとも多いのが「2型糖尿病」で、生活習慣病の一つに数えられます。進行すると、糖尿病神経障害、糖尿病腎症、糖尿病網膜症などの合併症を起こすことがあります。糖尿病神経障害はさまざまな身体の不調を引き起こし、糖尿病腎症は、進行すれば人工透析による治療が必要になります。また、糖尿病網膜症は、最悪の場合失明に至ります。
いずれも、生活の質を大きく低下させる合併症です。
脂質異常症
いわゆる「血液がドロドロ」の状態です。血中のコレステロール値や中性脂肪の値が基準を超え、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。
脂質異常症自体は命にかかわる病気ではありませんが、早期に治療を開始し、心筋梗塞や脳梗塞などの血管系の疾患を予防する必要があります。
動脈硬化
動脈血管が狭く、硬くなった状態です。
血液の流れが悪くなり、脳梗塞、心筋梗塞、解離性大動脈瘤といった命にかかわる疾患を引き起こします。
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を原因として起こりますので、正しい生活習慣を送ることが、何よりの予防となります。
メタボリックシンドローム
内臓脂肪の量が一定の基準を上回っている状態です。
生活習慣病や、血管系の疾患を引き起こすリスクが高まります。大きな原因として、食べ過ぎ、運動不足が挙げられます。
内臓脂肪の量が基準となりますので、単に太っている/太っていない、という見た目だけでは判断ができません。定期健診などで指摘された場合には、早期に治療を開始しましょう。
バランスの良い食事を摂ったり運動を始めることは大切ですが、その具体的な方法を医師のアドバイスを受けることで、より効果的な改善が期待できます。
高尿酸血症/痛風
血中の尿酸値が、基準を上回っている状態が「高尿酸血症」で、この高尿酸血症が進行したときに発症リスクが高まるのが「痛風」です。
関節の強い痛み、腎機能の低下などを引き起こします。食習慣の変化(欧米化)などを原因として、近年患者数に増加傾向が見られます。
当院で行う生活習慣病の治療
生活習慣病の治療では、「生活習慣の改善」が大前提として必要になります。
バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動は、いずれの生活習慣病の治療にも欠かせません。
高血圧の場合
正確に測定した血圧に応じて、薬物治療が必要かどうかを判断します。必要であれば、血圧を下げるお薬などを処方いたします。 併せて、生活習慣改善の指導を行います。
糖尿病の場合
まずは生活習慣の改善のための指導を行います。
生活習慣の改善で十分な効果が得られない場合には、薬物治療を検討いたします。主に血糖をコントロールするお薬を使用します。
検査結果でHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が高いと言われたら?
HbA1cとは、糖尿病の指標とする値です。糖尿病の可能性がありますので、早期に受診をしてください。
脂質異常症の場合
基本的に、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高い方は薬物治療や生活習慣の改善指導を行います。
善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低い方は生活習慣の改善や禁煙指導を、中性脂肪(TG)が高い方には、生活習慣指導と、必要に応じた薬物治療で対応します。
生活習慣病にならないために年に一度の健康診断を!
生活習慣病の予防と早期発見には、定期的な健康診断が有効です。
健康診断では、現在の状態を客観視することができ、また医師から適切なアドバイスが受けられます。また、定期的に健康診断を受けることで、前回、前々回との比較しながら、ご自身の身体の健康状態がどのような変化をしているのか、努力した成果は出ているのか、ということを数値で知ることができます。 生活習慣の改善、生活習慣病の治療では、こういったことで得られる“モチベーション”あるいは“危機感”が非常に重要になります。
正しい生活習慣を維持できているのであれば過度に心配する必要はありませんが、やはり定期的に、できれば年に一度は定期健診を受けることをおすすめします。